利用頻度で選ぶコワーキングスペースプラン
はじめに
スタートアップの事業運営においては、コストを抑えつつ、変化に柔軟に対応できる拠点の確保が重要な課題となります。固定費となるオフィス賃料は、特に事業が軌道に乗るまでの段階では大きな負担となり得ます。このような背景から、多くのスタートアップ代表者がコワーキングスペースを検討されています。
コワーキングスペースの魅力の一つは、その多様な利用プランです。事業のフェーズやチームの働き方によって最適なプランを選ぶことで、コスト効率を高め、必要な時に必要なサービスだけを利用することが可能になります。特に「どれくらいの頻度で利用するか」という視点は、最適なプラン選びにおいて非常に重要です。
この記事では、コワーキングスペースの主な利用頻度に応じたプランタイプを解説し、スタートアップのニーズに合わせた賢いプラン選びのポイントをご紹介します。
利用頻度別の主なコワーキングスペースプラン
コワーキングスペースのプランは、利用頻度や時間に焦点を当てるといくつかのタイプに分類できます。それぞれの特徴を理解することが、自社に合ったプランを見つける第一歩となります。
1. ドロップイン(一時利用)
必要な時に都度利用するプランです。時間単位や1日単位で料金を支払います。
- 特徴: 事前の契約が不要な場合が多く、最も手軽に利用できます。利用料金は比較的高めに設定されていることが一般的です。
- 有効なシーン:
- 特定の日にチームで集まって集中的に作業したい場合。
- 外出先での急な作業スペースが必要になった場合。
- クライアントとの打合せ場所として一時的に利用したい場合。
- 初めてのコワーキングスペースを試してみたい場合。
- 注意点: 利用できる席数に限りがある場合や、予約が必要な場合もあります。頻繁に利用すると月額プランよりも割高になる可能性があります。
2. デイタイム会員 / 特定時間会員
特定の曜日や時間帯(例: 平日の日中のみ、週末のみ、夜間のみなど)に限定して利用できるプランです。
- 特徴: フルタイムの月額プランよりも料金が抑えられています。特定の時間帯にのみ作業が必要な場合や、週に数日だけ利用したい場合に適しています。
- 有効なシーン:
- 週2〜3日だけコワーキングスペースを利用したい。
- 日中は別の場所で働き、夕方からコワーキングスペースで集中したい。
- 自宅兼オフィスで、気分転換や集中したい時だけ利用したい。
- 注意点: 利用時間や曜日以外は施設にアクセスできません。利用可能な時間帯が自身の働き方に合っているか確認が必要です。
3. フルタイム会員 / フリーアドレス会員
施設の営業時間内であれば、いつでも自由に利用できるプランです。多くの場合、空いている席の中から自由に場所を選んで利用します(フリーアドレス)。
- 特徴: 最も柔軟に施設を利用できるプランです。毎日コワーキングスペースを拠点として利用したい場合に適しています。ドロップインやデイタイム会員よりも割安な月額料金が設定されています。
- 有効なシーン:
- ほぼ毎日コワーキングスペースをメインの作業場所として利用したい。
- 作業時間帯が不規則で、いつでもアクセスできる必要がある。
- チームメンバーが多様な時間帯に利用する可能性がある。
- 注意点: 固定席ではないため、日によって利用できる席や雰囲気が異なります。人気のスペースでは席の確保が難しい時間帯もあるかもしれません。
4. 固定席会員(専用デスク)
契約期間中、特定のデスクを自分専用の席として利用できるプランです。
- 特徴: 自身のモニターや資料などを置いておくことができ、オフィスのように利用できます。セキュリティ面でも安心感があります。フルタイム会員よりも料金は高くなります。
- 有効なシーン:
- 毎日特定の場所で集中して作業したい。
- 自身のワークスペースを確立したい。
- チームメンバーが固定席を共有したい。
- 注意点: フリーアドレスのような場所を変える柔軟性はありません。長期契約が必要な場合もあります。
5. チケット制 / 回数券
あらかじめ利用回数分のチケットを購入し、必要な時に使用するプランです。
- 特徴: 利用頻度が不規則な場合に無駄なく利用できます。月によって利用回数が変動するチームに適している場合があります。
- 有効なシーン:
- 月に数回は利用する見込みだが、利用する日が定まっていない。
- 複数のメンバーがそれぞれの都合に合わせて利用したい(共有可能か要確認)。
- 注意点: 有効期限が設定されている場合があります。利用回数が多い場合は、月額プランの方が割安になる可能性があります。
スタートアップのニーズに合わせたプラン選びのポイント
スタートアップ代表者の視点から、利用頻度別のプランを選ぶ際に考慮すべき具体的なポイントを解説します。
1. コスト効率と利用頻度
最も基本的な考え方です。想定される利用頻度に対して、どのプランが最もコスト効率が良いかを計算します。
- 例: 週に2回、1日あたり8時間利用する場合
- ドロップイン(1日利用 ¥3,000): ¥3,000 × 8回/月 = ¥24,000/月
- デイタイム会員(月額 ¥18,000): ¥18,000/月
- フルタイム会員(月額 ¥30,000): ¥30,000/月 この場合、デイタイム会員が最もコスト効率が良いと言えます。ただし、これはあくまで基本的な計算であり、後述する付帯サービスや柔軟性も考慮が必要です。
2. チーム利用と会議室ニーズ
チームメンバー複数人で利用したり、クライアントとの打合せのために会議室を利用したりする頻度も重要です。
- 確認事項:
- ドロップインやデイタイムプランでも複数人利用は可能か?追加料金は?
- 会議室の利用は可能か?予約方法、料金体系(時間単位、会員種別割引など)。
- 会議室の利用頻度が高い場合、会議室利用特典があるプランの方が割安になることもあります。
3. 法人契約と付帯サービス
法人契約の可否や、登記、郵便受け取りといったサービスはどのプランで利用可能か確認します。
- 確認事項:
- ドロップインやデイタイムプランでは法人契約ができない場合や、付帯サービスが利用できない場合があります。
- 登記が必要な場合は、通常、フルタイム会員や固定席会員、あるいはバーチャルオフィスプランといった特定のプランでのみ可能となります。これらのサービスが必要な頻度も考慮に入れましょう。
4. 事業状況の変化への柔軟性
スタートアップは事業状況が速く変化します。それに合わせてプランを見直す必要が出てくるかもしれません。
- 確認事項:
- プラン変更(アップグレード/ダウングレード)は容易か?手数料はかかるか?
- 契約期間の縛りや解約条件は?(例: 最低契約期間3ヶ月、解約は1ヶ月前告知など)
- 利用頻度やチーム人数の変化に対応できるプラン構造になっているか。
5. 立地と営業時間
希望する都心部などのエリアにあるコワーキングスペースが、自身の想定する利用頻度・時間帯に対応したプランを提供しているかを確認します。また、自身の働き方に施設の営業時間が合っているかも重要です。
まとめ:事業の成長に合わせたプランの見直しを
コワーキングスペースの利用プランは多岐にわたります。ドロップインから固定席まで、それぞれのプランは特定の利用頻度やニーズに最適化されています。スタートアップの代表者様が、事業のフェーズやチームの働き方に合わせて、これらのプランを賢く選択・活用することは、コスト効率を高め、柔軟な事業運営を実現するために不可欠です。
まずは現在の利用頻度や必要なサービス(チーム利用、会議室、法人契約など)を明確に洗い出してください。その上で、各コワーキングスペースのプラン内容、料金、付帯サービス、そしてプラン変更の柔軟性を比較検討することが推奨されます。
また、事業の成長と共に利用頻度や必要な機能は変化します。一度決めたプランに固執せず、定期的にプランを見直し、その時点での事業状況に最も合ったコワーキングスペースの活用方法を選択していく視点を持つことが重要です。