スタートアップ チーム規模別 コワーキングスペース選定ガイド
スタートアップ企業にとって、チームの拠点となるオフィス選びは重要な経営判断の一つです。特に事業の初期段階では、チームの人数も流動的であり、コストを抑えつつ柔軟な働き方を実現できるコワーキングスペースは有力な選択肢となります。しかし、チームで利用する場合、個人の利用とは異なる視点での検討が必要です。
本記事では、スタートアップのチーム規模に応じたコワーキングスペースの選び方について、費用、設備、契約形態などの具体的な比較検討ポイントを解説します。
チーム規模によるコワーキングスペース利用の検討ポイント
チームでコワーキングスペースを利用する際に考慮すべき点は、チームの人数規模によって変化します。事業の成長に合わせて人数が増減することも踏まえ、将来的な拡張性も視野に入れることが望まれます。
少数チーム(〜3名程度)での利用
事業立ち上げ初期の少数チームの場合、固定費を最小限に抑えつつ、必要に応じて集まって議論できる場所が求められます。
- 利用形態:
- フリーアドレス: 日によって出社人数が異なる場合に無駄がなく、最もコスト効率が良い選択肢です。ただし、チーム全員が必ず並んで座れる保証はありません。
- 一部固定席: 代表や特定のメンバーが毎日利用する場合、1〜2席を固定席にし、他のメンバーはフリーアドレスやドロップインで利用するハイブリッドな形態も考えられます。
- 必要な設備・サービス:
- 複数人での利用が可能な会議室(予約制、従量課金または時間制プラン)
- 安定したWi-Fi環境
- 基本的な電源設備
- 必要に応じた郵便物受け取りサービス(登記住所利用する場合など)
- 契約の柔軟性:
- ドロップイン利用や、月単位で人数やプランを変更できる柔軟な契約形態が適しています。事業の状況に応じてすぐに利用を調整できる点が重要です。
中規模チーム(4〜10名程度)での利用
チームメンバーが増え、日常的に共同作業や打合せが必要になる中規模チームでは、拠点としての機能がより重視されます。
- 利用形態:
- 固定席(チーム用): チーム全員分の固定席を契約することで、毎日の出社場所を確保し、チームの一体感を醸成できます。チームメンバー間のコミュニケーションが円滑になります。
- 個室オフィス(専用オフィス): セキュリティやプライバシーの観点から、チーム専用の空間を確保したい場合に適しています。コワーキングスペース内に設けられた鍵付きのオフィスタイプです。
- 必要な設備・サービス:
- 比較的大人数が利用できる会議室(一定時間プラン内利用や割引がある契約が望ましい)
- チーム用の作業に適したデスクやレイアウト
- プリンターやスキャナーなどのオフィス機器
- セキュリティ対策(専用ネットワーク、入退室管理など)
- 契約の柔軟性:
- 法人契約を検討する段階です。固定席や個室の増減に柔軟に対応できるプランがあるか確認が必要です。半年契約や1年契約など、契約期間による割引も考慮しつつ、事業の変動リスクとのバランスを取ります。
大規模チーム(10名〜)での利用
より組織化された大規模チームでは、専用オフィスとしての機能が中心となりつつ、コワーキングスペースの提供するコミュニティや共有スペースの利便性も活用したいニーズが出てきます。
- 利用形態:
- 専用オフィス(複数室または広い空間): チーム全体の規模に応じた広さの専用空間が必要です。部門ごとやプロジェクトごとに部屋を分けることも検討します。
- カスタマイズ可能なオフィス: レイアウトや内装を一部カスタマイズできるオプションがあると、より自社に合った環境を構築できます。
- 必要な設備・サービス:
- 社内会議やクライアントとの打合せに十分な数・広さの会議室(利用料金や予約の取りやすさが重要)
- リフレッシュできる共有スペースやキッチンスペース
- 郵便・宅配便の大量の受け取り・発送対応
- ITサポートやコンシェルジュサービス
- 契約の柔軟性:
- 長期の法人契約が中心となることが一般的です。契約期間や解約条件、人数増減時の手続きと費用について詳細な確認が必要です。ビル全体を借りるよりは柔軟性がありますが、それでも一定の計画性は必要になります。
チーム規模別チェックリスト
チーム規模に応じて、特に確認すべきポイントを以下にまとめました。
| チェックポイント | 少数チーム(〜3名) | 中規模チーム(4〜10名) | 大規模チーム(10名〜) | | :----------------------- | :--------------------------------------------------- | :----------------------------------------------------- | :---------------------------------------------------- | | 費用 | 月額料金、ドロップイン、会議室の従量課金 | 固定席/個室の単価、会議室利用料、法人契約特典 | 専用オフィスの賃料、会議室利用料、初期費用、オプション料 | | 利用スペース | フリーアドレス、一部固定席 | 固定席、個室オフィス | 専用オフィス(複数室/広め) | | 会議室 | 小規模、予約制、利用頻度に応じた料金体系 | 中規模・大規模、一定時間無料/割引、予約システム | 大規模・多様なサイズ、予約システム、追加費用 | | 設備 | 電源、Wi-Fi | プリンター、モニター、電話ブース、安定したWi-Fi | 高度なネット環境、複合機、各種専用機器 | | セキュリティ | ネットワーク分離など | 個室の鍵、入退室管理、ネットワーク分離 | 専用オフィスの入退室管理、ネットワーク、監視カメラなど | | 契約形態 | ドロップイン、月額フリー、短期契約、月単位変更可否 | 法人契約、固定席/個室の増減対応、契約期間の柔軟性 | 法人契約、契約期間・解約条件、増減時の手続きと費用 | | 立地 | メンバーのアクセス、打合せ先からのアクセス | メンバーのアクセス、クライアントアクセス、ブランドイメージ | メンバーのアクセス、採用活動、クライアントアクセス | | 初期費用 | 発生の有無、金額 | 発生の有無、金額、人数による変動 | 発生の有無、保証金、工事費など | | 内観・雰囲気 | 個人の作業に合うか | チームでの作業に適した環境か、他の利用者との関わり | 企業文化に合うか、メンバーのモチベーション、コミュニティ |
まとめ:チームの成長を見据えた選択を
スタートアップがチームでコワーキングスペースを利用する際は、現在のチーム規模だけでなく、将来的な成長や人数増減の可能性も考慮に入れることが重要です。コスト効率、必要な機能(複数人での作業スペース、会議室の有無など)、契約の柔軟性、そしてセキュリティや設備といった様々な要素を総合的に比較検討する必要があります。
実際に候補となるコワーキングスペースについては、ウェブサイト上の情報(内観写真や動画を含む)で雰囲気を掴みつつ、可能であれば内覧やトライアル利用を通じて、チームでの利用に適しているかを確認することをお勧めします。チームメンバーと一緒に訪問し、実際に座席や会議室の様子、スペースの混雑度などを体感することで、オンライン情報だけでは得られない気づきがあるでしょう。
「コワーキング検索ガイド」では、多様な条件でコワーキングスペースを検索・比較できます。ぜひ、貴社のチーム規模とニーズに合った最適なコワーキングスペースを見つけるためにご活用ください。