スタートアップ 複数コワーキング拠点 賢い活用戦略
スタートアップが複数コワーキング拠点を検討する理由
スタートアップの事業は常に変化し、成長のスピードも予測が難しいものです。固定的なオフィスを持つことは、事業の拡大や縮小に対応しにくく、大きなコスト負担となる可能性があります。このような状況下で、コワーキングスペースは柔軟な拠点として多くのスタートアップに選ばれています。
さらに、リモートワークの普及や、特定のプロジェクトのために一時的にチームメンバーが増えるなど、多様な働き方や事業状況に対応するためには、一つのコワーキングスペースだけでなく、複数の拠点を戦略的に使い分けることが有効な選択肢となり得ます。
本稿では、スタートアップが複数のコワーキングスペース拠点を活用するメリットや、賢い選び方、具体的な活用戦略について詳しく解説いたします。
複数コワーキング拠点活用のメリット
複数のコワーキングスペース拠点を活用することで、スタートアップは以下のようなメリットを享受できます。
- 事業フェーズやプロジェクトに合わせた柔軟性: 資金調達後や新しいプロジェクト開始時など、一時的にチームの規模が変わる場合でも、必要な期間だけ特定のエリアや機能を持つコワーキングスペースを追加で利用するといった柔軟な対応が可能です。
- コスト最適化: 全員が毎日出社するわけではないリモートワーク主体のチームの場合、固定費のかかる大きなオフィスや単一の固定席契約よりも、必要な時に必要な場所(自宅近く、クライアント先近くなど)で利用できるドロップインや従量課金制の拠点を組み合わせる方が、総コストを抑えられる場合があります。
- 採用活動やチームメンバーの利便性向上: メンバーの居住地に合わせて複数のエリアにアクセスしやすい拠点を用意することで、通勤負担を軽減し、採用の間口を広げることにも繋がります。
- クライアントやパートナーとの連携強化: クライアントや主要なパートナー企業が集まるエリアに打合せ用の拠点を持つことで、移動時間の削減や、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。
- 気分転換と新しい刺激: 働く場所を変えることで、メンバーの気分転換になり、新しい環境やコミュニティから刺激を得る機会が生まれることもあります。
複数コワーキング拠点活用のデメリットと注意点
メリットがある一方で、複数拠点の活用には注意すべき点もあります。
- 管理の煩雑さ: 複数のコワーキングスペースとの契約手続き、請求管理、利用状況の把握などが煩雑になる可能性があります。法人一括契約に対応しているか、管理システムは使いやすいかなどを事前に確認する必要があります。
- 費用がかさむ可能性: 各拠点での利用頻度や人数予測が甘い場合、最適なプランを選べず、結果的に費用がかさんでしまうこともあります。定期的な利用状況の見直しが重要です。
- チームの一体感の維持: 全員が同じ場所に集まる機会が減ることで、チーム内での偶発的なコミュニケーションが減少し、一体感の維持に工夫が必要となる場合があります。オンラインツールでの密な連携や、定期的なオフラインミーティングの機会設定が有効です。
- 各拠点の規約や設備の違い: 拠点ごとに利用規約、設備(会議室の予約システム、プリンター利用方法など)、利用可能な時間などが異なります。利用するメンバーが混乱しないよう、情報の共有やルール作りが必要になります。
賢い複数コワーキング拠点の選び方
複数のコワーキングスペースを選ぶ際は、以下の視点を持つことが重要です。
- 目的別: 各拠点をどのような目的で利用するのかを明確にしましょう。
- 例: メインのチームが集まる「本社機能」を持つ拠点、クライアントとの打合せに特化した拠点、メンバーが自宅近くで集中作業するためのサテライト拠点など。
- 立地別: メンバーの居住エリア、主要クライアントのオフィス所在地、よく利用する交通結節点などを考慮し、アクセスしやすい場所を選びます。東京都心部であれば、ターミナル駅からの距離や複数路線が利用できるかなどが判断基準となります。
- プランと費用: 各拠点の利用頻度や人数予測に基づき、最もコスト効率の良いプランを組み合わせます。
- 固定席: 特定のメンバーが毎日利用する場合。
- フリーアドレス/月額会員: 不特定のメンバーが比較的頻繁に利用する場合。
- ドロップイン/時間貸し: 利用頻度は低いが、特定のエリアでの利用ニーズがある場合。 複数拠点利用に対応したパスや、割引制度を提供している運営会社もありますので確認しましょう。
- 設備とサービス: 会議室の数や予約システム、安定したインターネット環境、セキュリティ対策、ドリンクサービス、郵便物受け取りなどの付帯サービスが必要なレベルで提供されているかを確認します。特に会議室は利用頻度が高い場合、予約の取りやすさが重要です。
- 契約形態: 法人契約が可能か、また複数の拠点を一括で契約・管理できるかを確認します。初期費用の有無や金額も比較検討の重要な要素です。内観写真や動画、バーチャルツアーなどがウェブサイトに掲載されている場合は、事前に雰囲気や設備を確認するのに役立ちます。
複数コワーキング拠点の具体的な活用戦略事例
スタートアップにおける複数コワーキング拠点の活用戦略としては、以下のような組み合わせが考えられます。
- 「本社機能拠点」+「サテライト拠点」: チームのコアメンバーが集まる都心のコワーキングスペースをメイン拠点としつつ、リモートワーク中心のメンバーのために、地方や郊外にある自宅近くのコワーキングスペース(ドロップインや時間貸し利用可能な場所)を契約や利用場所候補としてリストアップする。
- 「作業集中拠点」+「打合せ・交流拠点」: 静かで集中できる環境のコワーキングスペースを個人作業のメインとし、チームミーティングやクライアント打合せには、会議室が充実している別のコワーキングスペースを利用する。
- 「主要エリア拠点」+「プロジェクト拠点」: 主要なビジネスエリアにチームの活動拠点となるコワーキングスペースを持ち、特定のプロジェクト期間中だけ、そのプロジェクトメンバーが集まりやすいエリアにあるコワーキングスペースを追加で契約する。
契約・管理上のポイント
複数のコワーキングスペースを利用する際は、契約・管理面での効率化も考慮すべきです。
- 法人一括契約: 複数の拠点を持つ運営会社の場合、法人向けに一括契約プランを用意していることがあります。契約手続きや請求業務を簡略化できるメリットがあります。
- 利用状況の可視化: 誰がどの拠点を、いつ、どれくらい利用しているかを把握する仕組みがあると、コスト管理やプラン見直しに役立ちます。
- 規約とルールの共有: 各拠点の異なる利用規約やルールについて、チームメンバーに周知徹底することが重要です。
まとめ
スタートアップが事業の成長や変化、多様な働き方に対応するためには、一つの場所に固定されたオフィスだけでなく、複数のコワーキングスペース拠点を戦略的に活用することが非常に有効です。コストの最適化、柔軟な人員配置、クライアント連携の強化など、多くのメリットを享受できます。
複数のコワーキングスペースを選ぶ際は、利用目的、立地、料金プラン、設備、契約形態などを多角的に比較検討し、自社の事業状況やチームのニーズに最も合致する組み合わせを見つけることが重要です。本稿でご紹介した選び方や活用戦略が、貴社の最適なコワーキングスペース選びの一助となれば幸いです。