スタートアップ コワーキング セキュリティ対策 選び方のポイント
はじめに
スタートアップのオフィスとして、コワーキングスペースの利用を検討されるケースが増えています。コストを抑えつつ柔軟な働き方を実現できるコワーキングスペースは、事業の成長フェーズに合わせて活用できるメリットがあります。しかし、複数の企業や個人が共用するスペースであるからこそ、セキュリティ対策については特に慎重な検討が必要です。
この記事では、スタートアップの代表者様やチームメンバーがコワーキングスペースを選ぶ際に確認すべきセキュリティ対策のポイントについて解説します。物理的なセキュリティからネットワーク環境、そして利用規約まで、多角的な視点から信頼できるスペースを見極めるための情報を提供いたします。
コワーキングスペースにおけるセキュリティリスク
コワーキングスペースはオープンな環境であるため、様々なセキュリティリスクが存在します。これらを理解し、対策を講じることが重要です。
- 情報漏洩: パソコン画面の覗き見、会話の盗み聞き、置き忘れた書類からの情報流出などが考えられます。
- 不正アクセス: 共用ネットワークを利用している場合、適切な対策がなされていないと、自身のデバイスや社内システムへの不正アクセスのリスクがあります。
- 盗難・紛失: 個人のデバイスや物品の盗難、または書類などの紛失リスクがあります。
- 物理的な侵入: 部外者の不正な立ち入りによる情報へのアクセスや物品の持ち出しなどが懸念されます。
これらのリスクを踏まえ、コワーキングスペースがどのようなセキュリティ対策を講じているのかを確認する必要があります。
選び方のポイント1:物理的なセキュリティ対策
スペースへの入退室管理や、施設内の設備に関する物理的な対策は、基本的なセキュリティレベルを示す重要な要素です。
- 入退室管理システム:
- 会員以外が容易に入場できないよう、カードキー、ICタグ、生体認証などを用いた入退室管理システムが導入されているか確認しましょう。受付に常にスタッフが駐在しているかも安心材料の一つです。
- 監視カメラ:
- 共用エリアやエントランス、通路などに監視カメラが設置されているか確認します。これにより、不正行為の抑止や、万一のトラブル発生時の原因特定に役立ちます。
- 鍵付きロッカーやキャビネット:
- 一時的に離席する際や、帰宅時に重要な書類やデバイスを保管できる鍵付きのロッカーやキャビネットがあるか確認します。特に固定席ではないフリーアドレス利用の場合、このような保管スペースは必須と言えます。
- オフィス区画や会議室の独立性:
- 重要な会議や集中作業を行う際に、外部から遮断された個室や、防音性の高い会議室があるか確認します。これにより、会話の盗み聞きや画面の覗き見リスクを低減できます。
選び方のポイント2:ネットワークセキュリティ対策
インターネット接続は業務遂行に不可欠ですが、共用Wi-Fiのセキュリティレベルには注意が必要です。
- Wi-Fiの暗号化:
- 提供されているWi-FiネットワークがWPA2やWPA3などの強力な暗号化方式で保護されているか確認します。暗号化されていないネットワークは通信内容を傍受されるリスクが高いです。
- SSIDの複数設置:
- 可能であれば、共用SSIDとは別に、よりセキュリティの高いSSIDや、固定席・個室向けの専用回線が用意されているか確認します。
- ファイアウォール:
- ネットワーク全体で適切なファイアウォール設定がなされているか、運営側に確認することも検討します。
- VPN利用の推奨/サポート:
- コワーキングスペース側が、利用者にVPN(Virtual Private Network)の利用を推奨しているか、またはVPN接続に関するサポートを提供しているかなども確認ポイントです。自身のチームでVPNを利用することも有効な対策です。
選び方のポイント3:情報セキュリティに関するルールと運用
物理的な設備だけでなく、スペースの運営方針やルールもセキュリティに大きく影響します。
- 利用規約:
- 機密情報の取り扱い、プライバシー、禁止事項など、情報セキュリティに関する明確な規約が定められているか確認します。規約内でセキュリティに関する運営側の責任範囲が明記されているかも重要な点です。
- 運営側の管理体制:
- スタッフがセキュリティ意識を持って運営にあたっているか、不審者への対応やトラブル発生時の連絡体制が明確であるかなども、内覧時などに確認できると良いでしょう。
- 書類や私物の管理に関するルール:
- 退席時に書類を放置しない、私物を適切に管理するといった利用者向けのルールが周知されているか確認します。
選び方のポイント4:法人契約における確認事項
法人として契約する場合、契約内容にセキュリティに関する条項が含まれているか確認しましょう。
- 機密保持契約(NDA):
- 必要であれば、コワーキングスペースの運営会社との間でNDA締結が可能か確認します。
- 利用者の管理:
- 法人契約で複数人が利用する場合、利用者の登録・変更手続きが適切に行えるか、過去の利用者の情報はどのように管理されているかなども確認しておくと安心です。
利用者自身でできるセキュリティ対策
コワーキングスペース側の対策だけでなく、利用者自身の行動もセキュリティ維持には不可欠です。
- PC画面の管理:
- PCから離れる際は画面ロックをかける習慣をつけましょう。可能であれば覗き見防止フィルターの利用も検討します。
- 公共Wi-Fi利用時の注意:
- 共用Wi-Fi利用時は、VPNを必ず使用するか、機密性の高い情報のやり取り(オンラインバンキング、重要なファイルの送受信など)は行わないようにします。
- 会話の場所選び:
- 電話やオンライン会議で機密情報について話す際は、個室や予約した会議室を利用し、周囲に聞かれないように配慮します。
- 書類やデバイスの適切な管理:
- 離席時は必ず貴重品を持ち歩くか、鍵付きロッカーに保管します。重要書類はシュレッダーを利用するなど、廃棄方法にも注意します。
まとめ
スタートアップがコワーキングスペースを選ぶ際、コストや立地、設備に加えて、セキュリティ対策は非常に重要な検討要素です。物理的な対策、ネットワークセキュリティ、運営側のルール、そして契約内容など、多角的な視点からスペースのセキュリティレベルを確認し、自社の情報資産を守るための環境を選びましょう。
また、コワーキングスペース側の対策に依存するだけでなく、利用者一人ひとりがセキュリティ意識を高く持ち、日々の行動に注意を払うことが、安心して業務を行う上で最も重要です。これらのポイントを参考に、自社にとって最適なコワーキングスペースを見つけてください。